【不調のサインを読み解く】あなたの頭痛はどのタイプ?代表的な「3つの慢性頭痛」と薬の落とし穴
「頭痛がひどくて病院でMRIを撮ってもらったけれど、『脳には異常ありません』と言われ、とりあえず痛み止めだけ処方された」

頭痛で悩んでいる患者様から非常によくお聞きするお悩みですが、意外にもつらい頭痛を持っている方でも病院に行かずに自身で片頭痛や緊張性頭痛だと判断されている方が多かったりします。
前回は「危険な頭痛(二次性頭痛)」の具体的なサインをお伝えしました。今回は、脳や血管の病気ではないものの、慢性的に何度も繰り返す「一次性頭痛」について解説します。
頭痛薬が手放せない状態から抜け出すための第一歩は、「自分の頭痛がどのタイプなのか」を正しく知ることです。
今回世界の頭痛診療のグローバルスタンダードである「国際頭痛分類 第3版(ICHD-3)」の基準をもとに、専門的な内容を一般の方にもわかりやすく翻訳してまとめました。
ご自身の症状と照らし合わせながら、ぜひ最後までお読みください。
1.頭痛だけじゃない!?全身に影響を及ぼす「片頭痛(へんずつう)」
女性に比較的多く見られ、単なる「頭の痛み」にとどまらず、日常生活の質を大きく下げてしまう片頭痛。
国際頭痛分類(ICHD-3)によると、片頭痛はただ頭が痛いだけでなく、大きく分けて**「4つの段階」**をたどることがわかっています。
①痛みが来る前のサイン(予兆期)
実は頭痛が起こる数時間から、長い人では1〜2日前から、身体はすでにサインを出しています。
「異常にあくびが出る」
「異常な疲労感がある」
「首が異常にこる」
「特定の甘いものが食べたくなる」
といった症状に心当たりはありませんか?これらは単なる疲れではなく、片頭痛が始まる前の「予兆」である可能性が高いのです。
②特殊な視覚の異常(前兆期)
片頭痛持ちの方の一部には、痛みが来る直前(5〜60分間ほど)に特殊な前兆が現れます。
最も多いのが「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれる視覚の異常です。
視界の真ん中にチカチカ・ギザギザした光が現れ、それが徐々に広がって一部の景色が見えなくなります。
③強烈な痛みのピーク(頭痛期)
前兆が終わると、いよいよ本格的な頭痛が始まります。一度始まると、薬を飲まない場合は4時間から最長で72時間(丸3日)も痛みが持続します。
以下特徴になります。
- 痛みの特徴: ズキズキと脈打つような強い痛みです。頭の「片側」が痛むことが多いですが、両側が痛むケースもあります。
- 動くと悪化する: 歩いたり、階段を昇り降りしたりするだけで痛みがガンガンと悪化します。
- 光や音への過敏症: 痛みだけでなく、吐き気(悪心)や嘔吐を伴うことがよくあります。また、普段は気にならない部屋の照明を「まぶしい」と感じたり、テレビの音を「うるさい」と不快に感じたりする(光過敏・音過敏)ため、暗くて静かな部屋でじっと横になりたくなります。
④頭痛が去った後の「二日酔い」状態(後発症状期)
激しい痛みが治まった後も、すぐにスッキリとはいきません。
最長で48時間ほど、極度の疲労感や倦怠感、首のこり、集中力の低下などが続きます。
「頭痛の二日酔い」とも呼ばれるこの時期も、片頭痛という症状の一部なのです。
このように、片頭痛は単なる「一時的な頭の痛み」ではなく、発症前から痛みが去った後まで、数日間にわたって患者様の貴重な時間と体力を奪ってしまう非常に厄介な症状です。
「たかが頭痛だから…」と一人で我慢せず、まずはご自身の痛みのサイクル(予兆や前兆などのサイン)に気づくことが、改善への大きな第一歩となります。
一方で、**「私には吐き気やズキズキとした激しい痛みはないけれど、とにかく頭全体がギューッと重く締め付けられるように痛い…」**という方も多いのではないでしょうか。
続いては、デスクワーカーなど現代人に最も多く見られるもう一つの代表的な頭痛、「緊張型頭痛」について解説していきます。
2.現代人に最も多い「緊張型頭痛(きんちょうがたずつう)」
生涯のうちに30〜78%もの人が経験すると言われるほど、非常に多くの方が悩まされている一般的な頭痛です 。長時間のデスクワークやスマホ操作、そして精神的なストレスを抱えやすい現代のライフスタイルと密接に関わっています。
①痛みの特徴と持続時間
片頭痛が「ズキズキ」なら、緊張型頭痛は「ギューッ」「ズーン」という痛みです。
- 頭の両側や後頭部、首すじにかけて、鉢巻きで強く締め付けられるような、あるいは重石を乗せられたような圧迫感(非拍動性)が特徴です 。
- 痛みの強さは「軽度〜中等度」が多く、一度痛みが始まると30分程度で治まることもあれば、長いと7日間もダラダラと続くことがあります 。
②動いても悪化しない(片頭痛との決定的な違い)
片頭痛は動くと痛みが悪化しますが、緊張型頭痛は歩いたり階段を昇り降りしたりする「日常的な動作」によって痛みが増悪することはありません 。
そのため、頭の重さや鬱陶しさを感じながらも、なんとか仕事や家事を続けられてしまう(我慢できてしまう)のが厄介な点です。
③吐き気や嘔吐はない
頭痛の最中に吐き気(悪心)や嘔吐を伴うことはありません 。
また、光や音を不快に感じることはあっても、片頭痛のように両方同時に過敏になることは基本的にありません 。
④頭の周りの「筋肉の悲鳴」
国際頭痛分類の基準でも非常に重要視されているのが、「頭蓋周囲の圧痛(とうがいしゅういのあっつう)」というサインです 。
これは、頭の周りや首、肩の筋肉を直接触ると、異常に硬く緊張しており、軽く押されただけでも強い痛みを感じる状態のことです 。
ただの「こり」を通り越して、筋肉や筋膜が痛みのセンサーとして過敏になっている証拠なのです。
特に後頭部周辺の筋肉や軟部組織には痛みを感知するセンサーが非常に多く存在しているため、過度な緊張による慢性的な血流不良がそのセンサーの状態をさらに悪化させてしまいます。
「たかが肩こりからくる頭痛だから…」と軽く見られがちですが、市販薬でごまかしながら放置していると、月に15日以上も痛みが続く「慢性緊張型頭痛」へと悪化し、毎日の生活の質を大きく下げてしまう深刻な状態になります。
最後は、非常に激しい痛みを伴い、男性に多く見られる特殊な頭痛「群発頭痛」について解説します。
3.激烈な痛みを伴う「群発頭痛(ぐんぱつずつう)」
片頭痛や緊張型頭痛に比べると患者数は少ないですが、男性に多く見られ、ある決まった時期(群発期)に集中して毎日のように起こる特殊な頭痛です。
①痛みの特徴と持続時間
- 片方の「目の奥」や「眼の上のあたり」「こめかみ」を、スプーンでえぐられるような、あるいはキリで刺されるような耐え難い激痛が起こります。
- 一度の発作は15分から、長いと3時間(180分)ほど続きます。
②目や鼻に現れる「自律神経のサイン」
群発頭痛の最大の特徴は、痛みがある側(片側)の顔に、以下のような自律神経の異常が現れることです。
- 痛む側の目が充血する、涙がポロポロと出る
- 痛む側の鼻が詰まる、鼻水が出る
- まぶたが腫れたり、瞳孔が小さくなったりする
③痛みのあまり「じっとしていられない」
片頭痛の患者様は「暗い部屋でじっと横になりたい」と感じますが、群発頭痛の患者様は真逆です。痛みが強烈すぎるため、じっと座ったり寝ていたりすることができず、落ち着きなく歩き回ったり、痛みを紛らわすために興奮した様子になったりするのが特徴です。
④「群発期」という特有のサイクル
「1日おき」から、多い時では「1日に8回」もこの激痛発作が起こります。これが数週間から数ヶ月間(群発期)にわたって毎日のように続くため、日常生活に甚大な被害を及ぼします。
群発頭痛は「生きているのがつらい」と表現されるほど壮絶な痛みを伴うため、発作の恐怖から常に鎮痛薬を持ち歩き、少しでも違和感があればすぐに薬を飲んでしまうという方も少なくありません。片頭痛や緊張型頭痛にお悩みの方も、痛みの辛さから薬を手放せなくなっている方は多いのではないでしょうか。
しかし、実はこの**「痛みを恐れて頭痛薬を手放せなくなっている状態」**こそが、別の厄介な頭痛を引き起こす引き金になることがあります。
最後に、現代の頭痛治療において非常に大きな問題となっている「薬物乱用頭痛(薬事性頭痛)」について解説します。
4.【要注意】痛みを恐れるあまり陥る罠「薬物乱用頭痛」
片頭痛や緊張型頭痛などの慢性頭痛を持つ方が、痛みを恐れて頭痛薬(鎮痛剤)を頻繁に飲み続けることで起こる、現代において非常に増えている厄介な状態です。
①薬が脳のセンサーを過敏にしてしまう
「痛くなる前に飲んでおこう」「少しでも違和感があるから早めに飲もう」と薬を手放せなくなると、脳の痛みをコントロールする機能が徐々に狂ってしまいます。その結果、逆に痛みのセンサーが過敏になり、少しの刺激でも頭痛を引き起こすようになってしまうのです。
②こんなサインがあったら要注意
- 1ヶ月のうち、半分(15日)以上は頭痛がある。
- 頭痛薬を月に10〜15日以上飲む状態が、3ヶ月以上続いている。
- 以前は効いていたはずの頭痛薬が、最近あまり効かなくなってきた。
- 薬が手元にないと不安で仕方がない。
このような状態に陥っている場合、自己判断で薬を飲み続けるのは逆効果になる可能性が高いため、服薬の見直しと、痛みの「根本的な原因」へのアプローチが急務となります。
■ まとめ:病名がわかっても「根本解決」にならない理由
ここまで、代表的な慢性頭痛の種類を見てきました。ご自身の症状に近いものはありましたか?
病院を受診して「あなたは緊張型頭痛ですね」「片頭痛ですね」と名前をつけてもらい、お薬を処方されても、なかなかスッキリと良くならず当院にいらっしゃる方が後を絶ちません。
それは、症状に名前がついただけで、**「首や頭の奥で、物理的に何が起きているのか?」という、痛みの「根本原因(黒幕)」**を解決していないからです。
次回、【不調のサインを読み解く】~頭痛編③~ではいよいよ、これら慢性頭痛を引き起こす「本当の黒幕」について解説します。
- なぜ、表面の筋肉をマッサージで揉むだけでは治らないのか?
- 首の骨(関節)の機能異常が、どうやって神経や頭を包む膜(硬膜)に悪影響を及ぼすのか?
徒手療法の専門家としての視点から、薬や表面的なケアでは届かない「痛みのメカニズム」を詳しく紐解いていきます。ぜひお楽しみに!
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